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【感想】海外ドラマ『ブラック・ミラー シーズン2-4「ホワイト・クリスマス」』簡単につながれる時代なのに、わたしたちはまるでつながってなんていない

ブラックミラー シーズン2

あなたは、スマートフォンを常に持っていますか?
スマートフォンでSNSを時を置かずに確認していますか?
SNSを見れば、そこには友人たちの、会社の同僚の、憧れの人の、つながりのある人たちの暮らしの断片が映し出されています。例えば「twiiter」であれば、喜びを共有できれば「いいね」を、その人のツイートを誰かに伝えたければ「リツイート」ができます。SNSを使い、より深く相手とつながることもできるでしょう。
相手と自分の関係を断ち切りたければ「ブロック」もできます。ブロックしてしまえば、ブロックした人のSNSをブロックされた人は閲覧できなくなります。興味がなくなれば一瞬でつながりをなくすこともできるのです。

「人里離れた極寒の地でクリスマスを祝う2人の男は、先端技術にまつわる自らの不幸話を語り始める。2人が語った3つの物語が繋がった時、ある事実が明らかに…。」

ネットフリックス作品エピソードから、『ブラック・ミラー シーズン2-4「ホワイト・クリスマス」』のあらすじを引用しました。

本編の内容に踏み込んだ文章を書いています。ぜひ先に『ブラック・ミラー シーズン2-4「ホワイト・クリスマス」』を鑑賞してください。その上で再び、ブログを見に戻ってきていただいたら非常に嬉しいです。

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「ブラック・ミラー シーズン1~2」を見て、自分の中のベスト3を選びました。『「ブラックミラー」で オススメは何?』という方はこちらをご覧ください。『「ブラック・ミラー シーズン1~2」マイベスト3』を読む方は、こちらをクリック

目次

『ブラック・ミラー シーズン2-4「ホワイト・クリスマス」』
簡単につながれる時代なのに、わたしたちはまるでつながってなんていない

ブログのタイトルはわたしが物語のテーマと考えるものです。
なぜそういう風に考えるかに至ったかを3項目にわけ、物語の展開から解説しています。
最後にこの物語から考えたことをまとめています。

心がつながることはない

常につながっている、だけれどそれはただの支配

一瞬で凍え死ぬかのような猛吹雪が吹いています。
そんな中にある小屋に何か訳ありそうな男が二人。おしゃべりな男と、寡黙な男。この日はクリスマスです。
二人は5年間、この小屋でともに住んでいたようです。五年の間の会話は三回程度です。
ぽつぽつと会話をする二人。
おしゃべりな男は「なんでここに来た、よっぽど最悪な事態がなければ、誰もこんなところに来たりしない」と言います。その問いに寡黙な男は答えませんが、寡黙な男の質問におしゃべりな男が話し始めます。

おしゃべりな男の昔話。
「アイリンク」という、通信端末となった人間の目とPCを繋げる技術があるようです。
おしゃべりな男は、ハリーという冴えない男とアイリンクでつながっています。ハリーが見るものは、全ておしゃべりな男のPCに映されます。おしゃべりな男の声はハリーの頭の中に直接届いているようです(ハリー以外の人には聞こえない)。
おしゃべりな男は、ハリーのような冴えない男とアイリンクでつながり、実際の現場で恋愛のアドバイスをしているのです。

クリスマスの夜。おしゃべりな男は会社のパーティー会場にハリーを行かせます。
おしゃべりな男はハリーが見ているものから状況を判断し、適切な行動をアドバイスします。まさしく「常につながっている状態」です。
恋愛に限りませんが、何かを得ようと思えば行動を起こさなくてはいけません。
失敗を恐れず行動できる人は、失敗しつつも成長します。しかし、ほんの小さな失敗を恐れて行動できない人もいます。そんな人には素晴らしいサービスだと思います。
現代でも恋愛アドバイザーはいるでしょうが、さすがにアドバイスを受ける人のすぐ近くでアドバイスするアドバイザーはいないでしょう。
どうしても現場に行けば、一人で判断し、一人で行動しなくてはなりません。
しかし、アイリンクを通したアドバイスは違います。失敗しても挽回策をアドバイザーがすぐにアドバイスしてくれます。おしゃべりな男は、ハリーがパーティで出会った人間のデータすらネットで調べています。多少はハリー自身で判断し会話を進めるなどしなければなりませんが、その判断は、補助輪をつけた自転車に乗っているような大きな危険をともわない判断です。
経験が足りない人間にとって、慣れは大切です。慣れるという意味では、こういうアドバイスの形もいいとは思います。しかし、いつまでも頼っていれば一人では何もできない人間になりそうです。

ハリーはアドバイスのおかげで、パーティーで一人の女性といい仲になります。
女性が一瞬席を離れた時、ハリーは見られているのを嫌い、アイリンクの接続を切りたいとおしゃべりな男に言います。その会話が終わらないうちに席を離れていた女性が戻ってきて「家に来て欲しいの」といいます。
おしゃべりな男の「行けといえ」という言葉に従いハリーは女性について行きます。
いきなり「家に来て欲しい」などという女性に対して、ハリーは舞い上がり、経験あるアドバイザーの声に従ってしまったのでしょう。もちろんハリーの下心が行動の主体ではあると思いますが、アドバイザーの声がなければもう少し冷静に考えられたのではないでしょうか。下心で動こうとする自分に対して恥ずかしいと思う心が冷静さを与えたでしょう。しかし、この時のアドバイザーの声は自分の恥を肯定してくれる悪魔のささやきでした。他者とより近くでつながっているがために自分自身の心の声と対話する機会を奪われ、他者の言葉のままに従うならそれはただの支配です。「絆」という言葉が意味するつながりでなく、「鎖」という言葉をイメージするようなつながりです。

女性はハリーを殺しました。極端に最悪な結果ですが、つながりによって自分で考えることを放棄した人間の末路です。

二つに別れた人格はつながっている。主従関係として

「通信端末となった人間の目」と説明しましたが、これは正式には「ゼットアイ」というそうです。
皆、入れていて外すことができない。これにはブロック機能が備わっていて、他者に対してブロックすると、ブロックされた人はブロックした人を影に隠れた状態のようにしか見ることが出来なくなります。
物語では、おしゃべりな男がしていたこと(アイリンクでの恋愛アドバイス。これは違法行為なようです)を知った、おしゃべりな男の妻が口論の末に、おしゃべりな男に対してブロックを行います(二人はその後、離婚したようです)。

おしゃべりな男の昔話は続きます。今度は本業について。
あるクリスマスの日。病院と思われる施設のベットに寝ている女性。演出なのか、女性の心の声も音声として流れます。
頭の中に「クッキー」という端末を入れて、そのクッキーに女性の人格をコピー(プログラムとして)していたようです。
再び頭から除かれたクッキーは、現代の言葉でいう「スマートデバイス」に移植されます。
スマートデバイス(便宜的に作中に出てくる機械をスマートデバイスという名称で呼びます)に入れられた女性の人格は、自分が肉体を持った本体からのコピーであることに気付いていません。スマートデバイスのスピーカーを通して声を発し、「自分はいったいどうなったか」と訴えます。
おしゃべりな男がスマートデバイスの中の人格に対して、「コピーであること」を告げますが、スマートデバイスの中の人格は、理解できません。
おしゃべりな男は、スマートデバイスの中にいる人格に肉体をもつ本体のために働く(家の管理。スケジュールを通知したり、起床の手伝い、いい焼き加減のパンを作るとか)ということを伝え、自主性をもつコピー人格が主人(人格のコピー元)に忠実に働くように調教するのが仕事だったのです。
調教というのはスマートデバイスの中の人格の時間を制御し(数分を3週間にしたり)、苦痛を(何もすることもなく、眠れもしない)与え命令に従うようにすることです。この制御におしゃべりな男のプロの技があるようです。

家の中での行動に関しては、完全に「スマートデバイス」の中の人格が監視しています。つながっているといえます。本体は自分のコピーである「スマートデバイス」の中の人格が何をしているのかわかりませんが、「スマートデバイス」の中の人格は本体の行動を監視し、家を制御し、快適に暮らせるようにしています。本体に逆らうようなことはなさそうです。
ハリーのエピソードとは主従関係が逆転していますね。監視者が従です。しかし、これも主従関係という点では同じです。
誰かと誰かが、近すぎるほどつながるということは、どうしても絶対的な主従関係を生み出してしまうのかもしれません。「友や夫婦のように良い塩梅の関係はもつのはなかなか難しい」のではと、このドラマを見ていると思ってしまいます。
始終監視できるような状態で支配が確立してしまうと、近すぎるゆえに逃れらないのでしょう。
通常は人間同士の関係に問題が生じたとしても、いったん離れられれば冷静になれるものです。他の人にも相談できます。しかし終始監視されていては、監視者にについての相談は難しいと思われます。
ハリーの時のように見ている側が主となることが多いでしょう。見ている側が従となるのは、見られている側が自分が何をしている時(裸が見られるなど、あまり他人に見られたくないこと)も、それを見られても平気な関係のとき。見ている側を人として認めてすらいないときでしょう。
そんな両者に心のつながりなどあろうはずがありません。

僕らはつながっていなかった

「彼女の父親は僕を嫌っていた」という言葉とともに寡黙な男がしゃべり始めます。彼女とのことを。

彼女との仲が良い場面がまず描かれます。寡黙な男(このエピソード内では寡黙ではないですが)、彼女、東洋人の男性の友達とその恋人の四人で酒を飲んでいる場面が描かれ、そのあとの寡黙な男と彼女が二人きりの場面で妊娠が発覚し二人の関係は壊れます。
妊娠について話したくないという彼女の言葉を聞かず、妊娠を喜び、話し続ける寡黙な男。彼女は「生みたくない」と告白します。その言葉に動揺し、同時に彼女が妊娠しているのに先ほど酒を飲んでいたことに寡黙な男は激怒します。彼女は寡黙な男のゼットアイをブロックします。
次の日、彼女は寡黙な男と同棲していたらしい家から出て行きます。寡黙な男はブロックによって、彼女との連絡すら取れなくなります。写真上の彼女の顔さえ見られません。

彼女がクリスマスの時期に実家に帰省することを知っていた寡黙な男は、クリスマス・イヴに人里離れた別れた彼女の実家の前の森の中から、彼女を見ます。生まれていた子供も。
親のブロックは子供にも引き継がれるようで、寡黙な男は子供の姿が影に隠れている状態でしか見られません。
寡黙な男はクリスマスの時期に毎年別れた彼女の実家に行くようになります。子供が成長し、女の子だということがわかります。ちょっとしたプレゼントも子供に渡します。まるでサンタクロースように。

別れた彼女が列車事故で亡くなります。亡くなったことによって別れた彼女の写真が見られます(事故の報道時に出ていた写真)。ブロックが解けたのです。当然、娘の顔も見られるでしょう。
そして、クリスマスの日プレゼントを持った寡黙な男は娘の顔を見ます。娘は東洋人の顔をしていました。子供は寡黙な男の子ではなく、酒を飲んでいた時にいた東洋人の子供だったのです。

寡黙な男は恋人として、彼女とつながっていた(少なくとも別れる前は)と信じていました。しかし、真実は残酷でした。恋人同士でいた時でさえ二人はつながっていませんでした。

寡黙な男は、別れた恋人の父親を殺してしまいます。
おしゃべりな男と寡黙な男の会話は、寡黙な男に罪の告白させるためだった、とわかります。しかも寡黙な男は「クッキー」に入れられていた人格のコピーだったのです。
おしゃべりな男は寡黙な男に告白をさせることによって、自分の罪(犯罪の現場を見ていたのに、通報しなかった)を許されます。しかし代償として、全ての人間にブロックされました。

技術は「つながり」よりも「離別」することを促進する

この物語ではゼットアイに他者が直接アクセスすることは禁じられています。自分が見ているものが相手にも見られるなんて嫌ですよね。もし、禁じられていなくて、ゼットアイに相手の目で見、相手の頭に直接話しかけられる機能がついていたとしたら、強い人(知識や経験がなど多い人)が相手の行動を自分の理想外の動きをしないように制御すると思います。どうしても主従関係が生まれてしまうとわたしは考えます。
それはそれでつながっていると言えるのかもしれませんが、対等なつながりとは到底思えません。

といって、信頼しあっていると思われる恋人同士だとしても、寡黙な男が信じていたであろう「愛という絆」はなかったように、つながりなどないのではないかと思います。互いに、ないであろう絆を、あるものとして信じてごまかしているのかもしれません。互いに信じているなら「つながりはある」と言えなくもないですが。

どんなに科学技術が進んで、人と人の関係が密接になったとしても、人と人がお互いに理解しあい「対等な関係として心と心がつながっている状態」になるのは難しいのではないかと思います。

反対に科学技術よって離れることは簡単にできるようになりそうです。SNSで気に入らない人をブロックするように、人と人との現実の関係をブロックすることも近い未来にできるようになるのかもしれません。

もし「人と人とのつながり」というものがあったとしたら、全ての人間との関係を断ち切られたおしゃべりな男のような人間だけが、「つながり」というものを心の底から実感できるのかもしれません。

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