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【感想】映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』この町には、ぼくたちにしか感じることができない恐怖があった。

IT

描画時間:1時間16分

私は映画館に入ったと思っていました。そこがお化け屋敷だったなんて気付きませんでした。

映画館で『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』を見てきました。
ホラー映画って見ないんです。グロいのはあまり好きではないし、偏見だけれど、ただびっくりさせるだけで物語が面白くないんじゃないかと思っていて。

そしてこの映画。グロいです(こんなのグロいうちに入らないと思う人もいるかもしれないけれど、私には十分です)。そしてビックリさせまくりです。
ホラー映画はあまり見ないと言いました。映画館で外国のホラー映画は(日本のは昔「リング」を見た記憶があります)初めて見たかもしれないです。
ここまで「これでもか」と言うほどに、驚かせるんですね。音声を効果的に使っています。驚きは、音の力も大きいです。

私が入った場所は確かに映画館でした。しかし、そこで体験した経験は「お化け屋敷」のそれと同じでした。なんの脈絡もなく、降りかかる暴力。それが喚起する「恐怖」。

「恐怖」はこの物語のテーマです。
「恐怖」の象徴として、ピエロ(ペニーワイズという名前らしい)が出てきます。象徴といっても、それは幻覚でなく、実体を伴った存在として主人公たち子供のグループを襲います。
主人公たちが、抵抗する力が弱い子供(十三歳)であるから、私に伝わる恐怖も大きく、見ていて「つらい」と感じたことも何度もありました。

劇中に流れる恐怖はピエロだけではありません。視聴者に驚きを効果的に伝えるために、「何かありそうだな」という雰囲気を醸成させる演出があります。それは、全編にただよってます。血の赤、いじめ、差別、不穏な家族関係。
「この映画はいつ終わるんだ」と思って見てました。実際は二時間十五分くらいの映画でしたが、三時間くらい見ていたかと思いました。

それでも面白いと感じました。
「主人公たちがどうやって『ピエロ』を倒すんだ」という点に物語を引っ張る力はなかったと思います。そういうことを考えている描写はほぼなかったです。「倒し方」で、引っ張る作り方も可能ですが、その描写をやると長くなるから諦めた(原作にはあったかもしれません。ちなみに私は高校の頃原作は読んでますが、随分前なので物語をほぼ覚えていません)のか、「ホラー映画なら、恐怖以外で引っ張る必要はない」と監督が考えたのかもしれません。

前回の『ブレードランナー 2049』の感想では、「SF」の定義について自分なりの考えを書きました。この映画を見ただけの解釈ですが、ホラーは「全編恐怖、および暗い感情を喚起する映像や音を視聴者に与え、おもにそれらよって生まれる緊張感で展開する物語」と定義してしまっていいのかもしれません。
『it』はピエロという大きな、死に直結する恐怖と、上述した「いじめ、不穏な家族関係」など何かそれが後々に大きな不幸に繋がるのではと思わせる空気、緊張感をもたらすその二つの感情に震えを与えるような映像描写によって目を離せなくしています(残酷な描写で見てられなくなりもしますが……)。
「おもに」と書いたのはそれ以外の場面もあるからです。「it」は子供たちの一夏の物語でもあります。子供の頃は永遠に続くかと思っていた青春の描写もあります。その場面では劇中に流れていた「暗い感情」や「恐怖」から解放されます。積み重なっていた「暗い感情」や「恐怖」の解放は、見ている方としてもとても気持ちいいものです。この解放も「it」を面白くしている要素の一つですね。

「では、それ以外では?」

それは、成長だと思います。
初めと終わりで、登場人物たちが「変化」していることは「物語」の大切な要素と私は知っています。
『it』を見て、その大切さを強く再認識しました。

見ているときは、グロかったり、驚かせたりする部分には少し辟易としていました。後から考えると、あまりこういう体験をしたことがなかったので、体験自体は楽しかったかなと思います(グロいところは見ていて気持ち良い訳ではありませんが)。物語は子供の成長群像劇とも要素もあるので、その点では楽しめました。

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『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』物語作りに役立つところ

「成長」でしょうか。
上述しましたが、『it』を見て、劇中の中での成長の大切さを強く再認識しました。

この物語から、成長という点を抜いたらどうなるでしょうか。
なんの脈絡もなく子供たちを襲ってくるピエロ。そして、暗い感情が湧き立たせる描写が続きます。子供たちがその暗い感情と対峙せず、ピエロを退治する物語だったら。

これでも、暗い感情を湧き立たせる映像が醸し出す緊張感と、ピエロが実際に襲ってくる場面が生み出す緊張感で、視聴者を画面に釘づけにすることは可能でしょう。
ピエロという実際の恐怖の対象があって、それを退治すること自体にも成長の意味がありますが、しかし子供たちはなぜピエロを倒せたのでしょうか?

成長という点を抜いた物語では、「なぜピエロを倒せたのか?」「なぜ恐怖を克服できたのか」という点に答えを与えていません。
「これでは町は平和になりました。めでたし、めでたし」で終わりです。「だから何」と思われるだけでしょう。
なぜ「だから何」と思われるかというと、カタルシスがないからです。

「ピエロを倒す」ということは、例えていうなら最終試験みたいなものです。試験に合格する能力はすでにあるが、それを本番で発揮する力があるか、どうか試す最後の試験です。だからそれ自体にあまり大きな意味はないのかもしれません。もちろん合格しないと意味はないわけですが、大切なのはそこに至る経過である成長こそが大事なのです。その成長があってこそ、「ピエロを倒す」ということに意味ができるのです。
成長がカタルシスを生みます。成長が「阻むものを超えられるのでは」という期待を視聴者に与えます。そうやって期待を高めていって、視聴者の予想通りの展開になったとき、カタルシスが生まれるのです。
その成長を劇中から読み取れなければ、あまり面白くならないのかもしれませんね。

子供たちは、いろいろな形で子供である自分から脱皮を試みます(必ずしもそれが正しいかどうかわかりません。大人になるということは諦めるという部分もあるわけですから)。一例を言えば、今までなされるままにしていた、いじめっ子たちと戦います。

不良もまた子供であるわけで、不良の一人(不良は四人いますが、クローズアップされるのは一人だけです)もまた自分からの脱皮を試みますが、主人公たちと違うのは自分の意思で恐怖に打ち勝とうとするのでなく、恐怖に力を借りて変化しようとします。見ているときは実は気づきませんでしたが、主人公たちと対比の意味があったのですね。

上述の成長がないとしているプロットでも面白くは十分できます。
「ピエロ」「恐怖」を通して、現代社会を皮肉ったり、ピエロとの戦いをCGとかをたくさん使った派手なアクションにするとか。皮肉な展開なら、色々考えさせられて、楽しめそうですし、アクションの方なら最後にピエロを倒した時のカタルシスの余韻で良い時間を過ごせたと思えるでしょう。皮肉の方は、短編小説のホラーではありそうな展開ですが、アクションの方はホラーではないですね。
他にも色々、やろうと思えばできるでしょう。まあ、主人公を子供にはしないでしょうが。
「ピエロ」よりさら大きな「恐怖」の対象になるという展開なら、子供を主人公にできそうです。オチは「本当に残酷なのは、まだ知識のない子供」だとかすれば良いなと思います。まあ、これでも負の方向に成長はしてしまうのですが。
それかいつも物事を茶化しているような子だけには、恐怖は効かなかったとか。これは面白そうですね。多分コメディになりますね。

いわゆるエンターテインメントの物語で成長の余地をその存在だけで体現している子供を主人公にした時点で、コメディやギャグでなければ劇中での成長は宿命づけられています。それを行わないならあまり子供を主人公にする意味はありません。
「いわゆるエンターテインメント」としたのは、広く世界の物語を見渡せば成長がない物語もあるからです。

劇中で全く変化しない人物の物語が平坦と言われるのは、期待によるカタルシスの上昇がなく、見ている人の感情の変化を促さないからなのでしょう。

「二十七年後の物語」としての続きがもしあったら、今度は子供の心を取り戻す物語とかになるのかな? 頭の硬い大人であったら、子供のように考えられるようになることも成長のひとつの形です。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』物語のあらすじ

アメリカの町、デリーでの物語。デリーでは子供の失踪事件が相次いでいた。主人公ビル(ジェイデン・リーバハー)の弟ジョージー(ジャクソン・ロバート・スコット)も失踪した子供の一人だった。
ビルは弟の死を認められず、友達のリッチー(フィン・ウルフハード)、スタンリー(ワイアット・オレフ)、エディ(ジャック・ディラン・グレイザー)を弟探しに付き合わせる。「ルーザークラブ」(負け犬クラブ)を自称している彼らだったが、いじっめ子の不良たちにいじめられていた転校生のベン(ジェレミー・レイ・テイラー)、やはり不良にいじめられていた黒人のマイク(チョーズン・ジェイコブス)を助ける。その二人と周りの女の子からいじめられていた、女の子のベバリー(ソフィア・リリス)を含んだビルら七人は謎の怪物に襲われる(リッチー以外)。その謎の存在’それ’を調べていくうちに、町の失踪事件との関係性が判明していく。
七人は街から’それ’を取り除こうとするのだが……。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』まとめ:物語の構造

「青春もの」「一夏の体験」ものでしょうか、同じ原作者スティーブン・キングが書いた「スタンド・バイ・ミー」と大枠で見れば同じだと思います。
ただ『スタンド・バイ・ミー』の主人公たちは、あまり記憶がありませんが(映画、原作小説ともに読んでるのですが)、自分から動いていたような気がします。
「it」は動かざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。その状況が主人公たちの成長も促す面もあるのですが。

「一夏の体験」プラス「呪われた家」パターン、かなと思います。
「呪われた家」パターンと言ってますが、スティーヴン・キング原作で言うなら『呪われた村』(吸血鬼ものでもあるけれど)や『シャイニング』がこのパターンに当てはまりますね。
要するにある一定の区切られた領域のみに事件が起こり、加えて登場人物たちはその領域から逃げられない、なのでどうにか逃げずに解決しなければならない状況に追い込まれる。「it」の場合だと、子供だという点(親を説得しなければ町から出られない)。しかし、実は別に戦わなくても逃げる方法はあります。「恐怖」には、時間制限があります。だから、子供側にも驚怖と向きあう動機が必要です。子供達のグループのリーダー的存在のビルだけには「ピエロ」と対峙する動機があります。しかしそれだけでは友達は動きません。仲間を助けるという、動機が出てきます。

特に理由もなく襲ってくるピエロという存在は、災害ものの一形態でもありますね。スケールが違いますが、『ゴジラ』と同じパターン。

物語に感情移入は必要ないと思っているのですが、隣の席で話している声から「笑っちゃった。ギャグなのかな」という声を聞いて、物語を物語として楽しむには感情移入も多少必要なのかもしれないと思いました。

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