【感想】映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』旅の先で未来が形になった
その「シュガー・ラッシュ」の続編「シュガー・ラッシュ:オンライン」が面白くないはずはない!
ということで、見てきました「シュガー・ラッシュ:オンライン」。
私の予想は当たりました。最高によい物語でした。
エンターテインメントとしては、前回の方が良かったような記憶がありますが、今回は考えさせる要素が強く、物語に深みがあって良かったです。
ゲームの中の、いわゆる電脳世界でのお話です。
前作まではローカル(ネットに繋がっていな、ゲームセンター内の)のゲームの世界の話だったのですが、今回はインターネットによって全世界にまたがる電脳世界が舞台となります。
前作でお互いに助け合い親友となった「ラルフ(ゲームの悪役)」「ヴァネロペ(レースゲーム「シュガーラッシュ」の主人公の女の子)」二人でしたが、親友とはいえ見ている未来だんだんと違ったものとなっていきます。
未来に変化を求めている「ヴァネロペ」、永遠に現在と変わらず「ヴァネロペ」と遊んで暮らすことを夢見る「ラルフ」。
ネットを使って小さな世界から出て、ヴァネロペは自分が求めているものを見つけてしまいます。それは、同時にラルフとの別れも意味しています。
現実世界にもこういうことはありますよね。「自分ならこういうときどうしただろうか」なんて考えながら見ていました。
そういえば、ディズニー映画にいつもある短編映画がなかった。あれ好きなのに……。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』物語作りに役立つところ
物語の発端の作り方でしょうか。
どんな物語にも終わりがあります(エンターテインメント作品と考えてください)。
例えば、魔王がいてそれを勇者が倒す物語。
勇者が魔王を倒して、ヒロインと結婚して物語が終わるとします。綺麗に終わっていますね。
でも、終わった後には登場人物たちの人生には続きがあるわけです。「勇者は世界を救うことはできたが、妻を救うことはできなかった」とかもありえますよね。まあ、そんな続きはあまり求められていないと思いますが……。
「シュガーラッシュ」は前作で綺麗に終わっています。私は「素晴らしく面白い映画」だと感動しました。
そんな風に終わった物語を、どう新しい物語として構築するか、という点で学べました。
映画を視聴している人たちは現実世界ではほぼありえない、憧れである「永遠の友情」を前作では見させてもらいそのファンタジーに満足します(完全に大人目線ですが。子どもにとっては、そんな友人が欲しいという願望になるのかな)。
今作「シュガー・ラッシュ:オンライン」ではそのファンタジーを壊します。
もしかしたら、こういう物語は見たくない人もいるかもしれません。他にも色々とファンタジーを続けられる続編の作り方もあったと思いますが、制作者はそれを選ばなかった。こういう物語でないと、ヴァネロペとラルフの成長を描けないと判断したのでしょう。
物語上の成長は、視聴者の成長にもつながります。映画が見終わった後、ほんの少し世界の見方を変えてくれます。もちろん成長以外にも、世界の見方を変えてくれる物語はありますが、子どもが見ることを考えたら、この手法が一番わかりやすいと思います。
一見、ヴァネロペの成長物語でもあると思いますが、ラルフの成長物語でもあります。
思い通りにならない現実を受け入れて、他者への依存から脱し、自分のいない世界での他者の成長を喜ぶという。
今作はネットの世界が舞台なのですが、求めているものの明確な形がわからないヴァネロペがネットの世界という、外の世界を見ることで求めているものを見つけていくという、舞台と物語のテーマがリンクしているところも上手いなと思いました。
外的要因でなく、内的要因で物語が進むのは、登場人物たちの意思を感じられて素晴らしいと思います。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』あらすじ
あるゲームセンターのゲームの住人である「ヴァネロペ」「ラルフ」は仲が良い友達。しかし、二人の見ている未来はだんだんと違っていった。自分の住む世界に退屈さを覚え始めた「ヴァネロペ」。ずっと今の世界で「ヴァネロペ」と楽しんでいきたい「ラルフ」。
ゲームセンターには新たにネットが繋がった。壊れてしまった「ヴァネロペ」のゲーム(シュガーラッシュというレースゲーム)を直すため(壊れたハンドルを調達)に、「ヴァネロペ」「ラルフ」はゲームセンターからネットの世界へと旅立つ。
その世界で、自分よりすごいレーサー「シャンク(すごく格好いい女性です)」に出会い興奮する「ヴァネロペ」。「ラルフ」はシュガーラッシュを直すために、動画サイトに動画を投稿しお金を稼ぐ。
無事、ハンドルを手に入れるのだが、ヴァネロペはネットの世界で出会ったシャンクがいるゲームに残ろうとする。それを聞いてしまったラルフはそれを阻止しようと考えてしまう。
二人の間には溝が入る。ネットの世界もとんでもないとことになっていってしまう。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』まとめ:物語の構造
高校のとき付き合っていた恋人(男視点で考えるので、女性)が、大学という広い世界に行ってもっと魅力的なもの(魅力的な男性という意味ではありません。むしろそういう男性に引っ張られる女性像をこの映画は否定しています。勉強やら、仕事とか自身が自身として夢中になれるもののことです)を見つけたが、男性の方はそれを受けいられず「誰かに騙されているんだ」と勝手に妄想し、ストーカーと化す話ですね。
たくさんのディズニーのプリンセスが出てくるのですが、その場面でも女性の自立を語っています(女性が主人公の最近のディズニーの物語では毎回語れれますが)。テーマの関連性として登場としたと思われるキャラクターたちでしたが、うまいことこの映画でも活躍の場があって、そこも「上手いな」と思いました。
最後にヴァネロペを追うのは、ラルフの負の感情を持ったウィルスということでヴァネロペとラルフの友情は壊れないし、ラルフ自身も過ぎ去る他者を受け入れるという形で終わってますが、繊細に計算してうまいこと物語を作っているなと思います。
一歩間違えれば、永遠に友情が壊れますね。
物語の展開が友情が壊れないことを計算に入れているのか、うまいこと最後はヴァネロペとラルフを共闘させます。そして最後はラルフがヴァネロペの成長を認めることを、ヴァネロペが確認できる形で終わらせます。ここら辺は脚本の妙というか、上手いですね。
お互いの未来の違いを見せる → 外の世界に行くきっかけを作る → 外の世界で自分が求めているであろうものが見つかる → 悩む → 女性の自立を阻止しようとしてしまう男性 → それを知って失望する女性 → 外的要因で二人は互いに問題解決にのぞむ → 問題解決の中で二人のわだかまりがなくなる → 男性は女性の成長を認める。
物語の展開が本当上手いですよね。ちょっとうまく出来すぎているきらいもあります。後半仲直りするくだりを作るために外的要因が現れるところなんて(といっても、その要因はラルフの負の感情ですし、それが現れるくだりも物語上で無理矢理感は全くないので、物語上の瑕疵はないのですが)、うまく行き過ぎという気もします。
「違う世界を見たいなんて、私はなんてバカなことを思ったのでしょう。あなたの側が一番いい」と最後に女性に言わせないところが、今までの典型的な物語から外れているのかな(こんな話ありそうだけど、あまり見た記憶がないけど)、と思います。
女性が自由に自分の意思を持つことが物語のテーマ(越えるべき壁)になるということは、それが現実世界ではまだそれが当たり前になっていないということです。
近い将来では、この映画が「何を問題にしているのかわからない」「当たり前のことじゃないか」と言われ、「つまらない」と言われてしまう(ネットの風景がよくわからなくてつまらない、と言われてしまうかもしれませんが)時代がくればと思います。
男性が女性に好かれるハードルも高くなりそうですね。
ネットの世界を現実世界のように描くところもすごいな、よく考えているなと思います(ここら辺はツッコミどころもありますが。そもそもゲームの住人が稼いだお金もどこに行くんだ……)。検索機能とかが擬人化されていてコミカルで面白い。動画でお金を稼いただり、その動画のコメントで傷ついたりと現実を風刺している部分もあります。ヴァネロペがバナー広告を持った広告を持って動いているところは、ネット広告の会社で働いている自分には皮肉が効いていて面白く感じられました。
描かれたネット世界はすごく綺麗な絵です。でも物語が良すぎたので、あまり絵を意識して見なかったな。
「ヴァネロペ」と「シャンク」のレース場面の動きはすごかった!
これは今の時代に見るべき映画だと思います。
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